クズリ Wolverine イタチ科
体長70〜90cm、体重10〜25kg。 スカンジナビア、ロシア、北アメリカ北部の寒帯林やツンドラに住む。

 「森林と渓流」誌には3歳の雄のヘラジカがクズリに噛みつかれて脊椎に届くほどの傷を負っていたことが記されている。クズリはシカを襲うとき、長い時間かけて追いまわし、時々攻撃し、相手が参ってしまうのを辛抱強く待つ。このときも同様にしてヘラジカを狙っていたようだったが、それを知らなかった人間のハンターが先にシカを撃ってしまったのだった。
 アラスカのグルカナ川上空を飛んでいた飛行機が、トナカイを襲うクズリを目撃している。トナカイは2度にわたってクズリを振りほどいたが、ついにクズリがその背に飛びつき、喉に牙を立て、引き倒した。

 Grinnell(1926)はワイオミングでクズリにあちこちを噛まれ、引き裂かれたピューマを見つけている。1本の脚は噛み折られていた。深い雪の中で激しい戦いがあったようだ。
 また、アメリカクロクマが腸が飛び出すほどに、腹を食い破られてしまったことがある。それほど激しい戦いになる前にこれらの動物がクズリに獲物を譲ってしまうところは何度か目撃されている。
 あるとき2頭のアメリカクロクマがウシの死骸を食べていたが、クズリが近づいてくるとパニックに陥り、慌てて逃げ出してしまった。またやはり2頭のピューマがシカを食べているときにもクズリがやってきて、1頭のピューマが威嚇したものの通じず、シカの死体から追い払われてしまった。

 レスリー・T・ホワイトは意外な相手にクズリが殺されるところを目撃している。池の岸をのんびりと歩いていたビーバーをクズリが攻撃したのだった。両者はもつれ合って水中へ落ちた。クズリはとうとうビーバーを放し、岸に這い上がろうとした。ところが傷を負ったビーバーが追いかけてきてクズリの喉元に食らいつき、再び水中へ引きずり込んでしっかりと押さえていたので、とうとうクズリは溺れて死んだ。
 Leonard Lee Rue(1981)によるとクズリの敵はオオカミである。オオカミが少なくなるとクズリの数が増えるとさえ言っている。シートンもクズリはオオカミの群に攻撃されると犬に追われたときと同様、木に逃げ登ると言っている。逃げ遅れてオオカミに取り囲まれてしまうとクズリも窮地に陥るらしい。

ラテル イタチ科
Ratel or Honey Budger

 体長60〜80cm
 アフリカ、南西アジア、インド産
 極北のクズリと同じくらい気の強いのが熱帯のサバンナに住むラテル。やはりアナグマの仲間で体重10kg前後の小さな動物だが、大型の肉食獣と出会っても逃げようともしない。それどころか短い脚を内側に曲げたいわゆるガニマタでのそのそと前進するから、ちょっと凄みもある。皮膚は蜂やヤマアラシの針も通さないほど固く、またルーズでヒョウやハイエナに首を噛まれても、容易に首を動かして噛み返し、攻撃者を敗走させるほどである。

 1959年、ジョイ・アダムソンは自分が育てたエルザ(雌ライオン)がラテルに近づくところを見ている。倒木の腐った幹に潜む幼虫を夢中でほじくっていたラテルは、エルザが上に覆い被さるほどに接近するまで気が付かなかった。
 ついに頭がぶつかり合うくらいになって、ラテルはエルザに気づき、シュッ、シュッとわめいて引っ掻いてきた。そのどう猛さにエルザは身を引いた。ラテルは攻めたり引いたりを頻繁に繰り返し、結局危機一髪の冒険を終わらせ、無事に逃げおおせた。
 アダムソンはエルザを野生に戻す試みを始めた頃、エルザが下腹部に深い噛み傷やひっかき傷を受けて帰ってきたことがあり、やはりあのときもラテルにやられたのだなと得心した(「野生のエルザ」統合記念版、2003)。

 ナイロビで7頭のまだ亜成獣のライオンがヌー(ウシカモシカ)を食べているとき、肉の匂いをかぎつけて3頭のラテルが近づいてきた。そして唸りを上げているライオンにもお構いなしに食べ始めた。ついにはライオンが後退し、ラテルが食べ終わるまで待たされるはめになった。
 南アフリカでは年老いたライオンがラテルと戦った例がある。ブッシュを踏みしだきながらの激しい戦いだったようだが、結果は観察されていない。ラテルがライオンの獲物を奪おうとして仕掛けたのが、ライオンの方も老骨に鞭打ってようやくしとめた獲物を奪われてなるものかと応戦したらしい(小原、1980)。
 クルーガー国立公園ではライオンがラテルを捕食したことがあった。ライオンに出会ってもすぐには引かない気の強さが災いしたのかもしれない。


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